第一種金融商品取引業 免許
第一種金融商品取引業者の場合には、開業にあたって、日本証券業協会、一般社団法人金融先物取引業協会、一般社団法人日本暗号資産取引業協会、日本投資者保護基金等への加入も必要に応じて求められます。財務局の審査もさることながら、とりわけ日本証券業協会の審査はこれに劣らず厳しいものとなっています。過去には、財務局の内諾を得ながらも、日本証券業協会の加入審査が通らず、登録を断念する例もありました。
金融商品取引法施行直後には、外国為替証拠金取引の媒介のみを行う事業者はIB(Introducing Broker)と称され、米系業者に所属するIBの第一種金融商品取引業者が多数登録されていた時代もありましたが、同米系業者の廃業等を経て、現在ではIB業態の第一種金融商品取引業者は少数派です。
前述のように、流動性の高い有価証券の販売や、取引に関連した顧客資金の預かり、有価証券の引き受け、店頭での金融先物取引(FX、証券CFD、バイナリーオプション)提供など、いわゆる第一種金融商品取引業に分類されるビジネスを開業するには、第一種金融商品取引業の登録が必要になります。
店頭デリバティブ取引の媒介が第一種金融商品取引業に位置付けられていることから、重要な点として、証券会社やFX業者の代理店業務、代理勧誘業務は、原則として第一種金融商品取引業に該当(但し、証券業務の一部は金融商品仲介業者として登録することにより適法)するということがあげられます。
一般に第一種金融商品取引業の新規登録の案件はそう多いものではありません。
当事務所は、金融商品取引業・ファンド組成の専門家として、多くの証券会社等の金融商品取引業者の運営のお手伝いをさせていただいております。第一種金融商品取引業の新規登録の完了までの支援実績も複数あり、また、証券会社・FX業者の継続的に支援を担当しております。
そのため、一般に行われているアフィリエイト等のいわゆるオンライン広告は、実際に広告の範囲で内容が留まれば「媒介」に該当しないものの、それを超えて、広告媒体側が能動的にユーザーへ個別の電話・メールでの口座開設勧誘等を行うと、アフィリエイトの範囲を超えて、「媒介」に該当し、第一種金融商品取引業に該当する可能性があるので、十分に注意が必要です。
また、無登録FX業者のアフィリエイトプログラムの場合も、アフィリエイターの行為が広告の範囲を超えて無登録営業の媒介行為を行っているものとして、無登録FX業者はもちろんのこと、アフィリエイターにも無登録営業の警告が実施された実例があります。無登録FX業者のアフィリエイトは、登録された第一種金融商品取引業者のアフィリエイトを行う場合と比べて、悪質性、故意性が認定されやすく、当局から媒介に該当する法令違反とみなされやすくなります。
他方で、信託受益権や集団投資スキーム持分等のいわゆる法2条2項各項の有価証券は、従来は募集又は私募並びに募集又は私募の取扱等の業務が第二種金融商品取引業に位置付けられていたところ、新制度では、電子記録移転権利の自己募集や、いわゆる適用除外電子記録移転権利に該当しない限り、こうした性質を持つセキュリティ・トークンの取扱等につき、第二種金融商品取引業ではなく、第一種金融商品取引業に位置付けられるようになりました。
なお、資本金5000万円以上の第二種金融商品取引業者が私募の取扱を行う場合、有価証券等管理業務に相当する金銭の預託を受ける業務を、特定有価証券等管理行為(金融商品取引法第二条に規定する定義に関する内閣府令第16条第1項第14号及び同第14号の2)として、第一種金融商品取引業の登録を受けずに行うことが認められています。
有価証券等管理業務と特定有価証券等管理行為は、選択的競合関係に立つとされ、第一種金融商品取引業であり、第二種金融商品取引業で私募の取扱業務を行う金融商品取引業者は、顧客資産の預かりが有価証券等管理業務と特定有価証券等管理行為いずれに該当するか法的立場を整理したうえで、それぞれの義務を履行する必要があります。
業務に係る人的構成要件の面では、投資助言・代理業者や第二種金融商品取引業者のように、社員総数2、3人というわけにはいきません。例え外注などを活用しても、最低限の勤務人数は業態にもよりますが5、6人は必要となるのが通常です。また、第一種金融商品取引業は取締役会又は委員会等設置会社である必要があります。
令和2年5月1日の改正金商法の施行で、暗号資産等関連デリバティブ取引((現・暗号資産等関連デリバティブ取引。いわゆるBitcoin FX)が第一種金融商品取引業に位置付けられたことにより、証券会社でも金先業者でもない、第三の類型の第一種金融商品取引業者が誕生しました。
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