暗号資産の売買・交換・預かり等の業務にはライセンスが必要です
令和元年金融商品取引法及び資金決済法改正により、従来資金決済法で使われていた「仮想通貨」の名称は、「暗号資産」に変更されました。
改正法に関しては、資金決済法と金融商品取引法、それから金融商品販売法の影響が大きいので、そこに限って順にご説明します。改正法の概要としては、大きなところでは、仮想通貨から暗号資産に呼称が変更されること、それから、暗号資産の管理業務、カストディ業務と言われますが、そういった業務への規制が導入され、暗号資産交換業に関する各種規制が強化されます。
金融商品取引法に関しては、暗号資産のデリバティブ取引に対する規制が導入されます。それから、電子記録移転権利、こちらは収益配当を行うようなトークンを電子記録移転権利と定義して、有価証券として位置付ける内容です。また、暗号資産を用いた相場操縦等の不公正な行為に関する規制を導入する内容にもなっています。
金融商品販売法に関しては、金融商品販売の定義に「暗号資産を取得させる行為」を追加する改正案が出ている状況です。
令和4年には再三に渡り暗号資産の上場前審査の年内撤廃方針も示されました。結果、他の国内取引所で上場済みの暗号資産に限って上場前審査が撤廃されています。
そのため、事実上利用者からの預かり暗号資産の100%に相当する暗号資産をコールドウォレットで保管する必要があります。
現代では、伝統的な現物暗号資産の取引所業態では、優勝劣敗、集約及び大規模化が進んでおり、内外とも競争の勝者は明らかになっています。時代の先端は数年前にNFTやDeFiに移行しましたが、さらにフロンティアは次の業態に移りつつあります。
「登録申請」の実績があるとする士業事務所は多数ありますが、行政書士で、申請代理人として仮想通貨交換業(現・暗号資産交換業)の「登録完了」まで一式で申請した実績を有するのは、おそらく平成31年頃までは日本全国で当事務所以外にほとんどなかったのではないかと思います。
今回のニュースレターでは、暗号資産該当性(後記1.)及び暗号資産交換業該当性(後記2.)を中心に、本改正及び本パブコメ回答の内容について説明します。
独立系の事業者の場合には、暗号資産交換業の登録を希望する場合、大企業や金融機関から資本参加、人的参加を仰いで、パートナーとして、ともに登録に向けた態勢を構築するの方法を検討してもいいと思います。
まず、すでに前編にてご説明のとおり、資金決済法に関しては、暗号資産管理業務の規制が導入されます。
次に、登録拒否事由として金商法に違反する場合が追加されます。また、これまで事前届出制であった業務内容の変更や、新規の仮想通貨の取扱いに関して事前届出制が明記されることになります。ただし、内閣府令で軽微な変更の場合には除外規定が設けられるのではないかと思います。
また、広告、勧誘規制の整備が行われます。まず広告に関する表示義務についてです。リスクの告知等も含め表示義務が課されています。これまで資金決済法上、表示義務はかなり限定的でしかなかったのですが、規制が加えられました。禁止事項として追加されたのが、誤認させるような虚偽の表示のほか、支払い手段として利用する目的ではなく、専ら利益を図る目的で暗号資産の売買等を行うことを助長するような表示が禁止されました。射幸心をあおるような内容が典型的かと思いますが、あくまで仮想通貨、暗号資産に関しては、決済手段ということで、専ら利益を図る目的での表示が禁止されたというところが特徴的かと思います。
そのほか、不招請勧誘やフロントランニング*3なども禁止されることになると思われます。こちらは、内閣府令で定める内容であり、まだ出てはいませんが、今後そういった内容が定められると想定されます。また、このあたりの広告、勧誘規制違反に関しては、刑事罰が定められています。
仮想通貨の信用取引に関しては、現物取引として資金決済法で定めが置かれています。金銭による信用供与については、金銭の貸付けになるので、貸金業の登録が必要であると考えられます。一方で、暗号資産の信用供与は、貸金業法上の金銭の貸付けには当たらないと解されており、現行法上は貸金業登録がなくても貸付けはできます。しかし、仮想通貨を貸付ける形での信用取引についても恐らく内閣府令でデリバティブ取引と類似の内容が定められると考えられます。
利用者財産の保全義務も強化されます。金銭に関しては、利用者の金銭の信託義務が課されることになります。暗号資産に関しては、信託はかかっていませんが、原則として利用者の保護に欠ける恐れが少ないものとして、内閣府令で定める方法で管理する内容になっています。これがいわゆるコールドウォレットという、仮想通貨をオンラインではなくオフラインで管理するというものであり、原則的な義務内容になってきます。
ただし、利用者利便性の確保のために必要なものとして、内閣府令で定める要件に該当するものは除外されていますので、限定的にはホットウォレットでの管理が可能です。府令でどのように定められるかは分かりませんが、ホットウォレットで管理可能な一定の上限等が引かれるのではないかと考えられます。また、履行保証暗号資産、すなわちホットウォレットで一部管理可能であるとしても、そこに関するリスクがあるという認識の下で、利用者のホットウォレットで管理する暗号資産と、同種、同様の暗号資産を別途、自己の資産として保有した上で、かつコールドウォレットで分別管理することが義務付けられる内容になっています。これは、もともと金銭で賠償するという案もありましたが、仮想通貨の引き出し、返還請求権は金銭債権ではないという理解であり、金銭債権ではなく、仮想通貨返還請求権を確実に弁済するための措置として、仮想通貨で安全に管理することが求められる内容になっています。
また、その分別している利用者の暗号資産及び履行保証暗号資産に対しては、特別な先取特権が付与されるという内容が、資金決済法に入っています。ここに関しては、民事法の領域となりますが、最終的にこういった担保権が付与される形で法案が提出されたということになります。
暗号資産の売買・交換・預かり等の業務にはライセンスが必要です。具体的には、いわゆるユーティリティ・トークンは、暗号資産交換業、セキュリティ・トークンの取扱い及び暗号資産関連デリバティブ取引は、第一種金融商品取引業、STO(電子記録移転権利)の自己募集は第二種金融商品取引業の登録が求められます。
特定のトークンを、既存の登録済み暗号資産交換業者に取り扱ってもらう場合、届出プロセスの中で、金融庁の事実上の審査があります。こうしたプロセスでは、個別の暗号資産の適切性や健全性を、個別具体的に疎明する必要があります。
暗号資産交換業ではさまざまな分野での専門的な知見が要求されることから、暗号資産交換業に関しては、当事務所は外部法律事務所や会計事務所等と連携して依頼をお引き受けしております。
また、暗号資産交換業の新規登録では、厳しい時代が長く続きましたが、令和3年11月には「デジタル・分散型金融への対応のあり方等に関する研究会」で新たな規制の在り方が議論されているなど、暗号資産交換業に対する当局の姿勢も、再び育成の色彩を強める雰囲気の時期もありました。
暗号資産交換業は、新しい分野であり、そしてブロックチェーン技術のわかりにくさも相まって、仕組みの理解が難しい分野です。一般的な事務所では絶対に対応できないと思います。
当事務所は、証券・金融法務専門事務所として、とりわけ仮想通貨やクラウドファンディング等のFINTECH分野に強みを有しています。暗号資産交換業の登録支援や、ビジネスコンサルティングは、お気軽に当事務所にご相談いただければと思います。
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