暗号資産交換業者 特定事業者
なお、暗号資産交換業は、金融庁暗号資産モニタリング室が地方財務局と一体となって連携しつつも、事実上、直接規制監督しているところが金融商品取引業者と異なります。 財務局監理の中小の金融商品取引業者にとって、金融庁はやや縁遠い存在ですが、暗号資産交換業者は、例え地方財務局長登録の業者であっても、金融庁と頻繁に連絡を取って業務を遂行する必要があり、また新規登録の申請も、基本的には金融庁が直接審査をすることになります。
改正資金決済法においては、利用者は、暗号資産交換業者に対して有する管理を委託した暗号資産の移転を目的とする債権に関し、当該暗号資産交換業者が分別管理を行う利用者の暗号資産及び履行保証暗号資産(いずれも第三取得者に移転したものを除く。)について、他の債権者に先立ち弁済を受ける権利を有します(改正資金決済法63条の19の2、民法333条)。すなわち、改正前の資金決済法においては、仮想通貨交換業者に利用者の仮想通貨の分別管理義務があるものの、あくまで仮想通貨交換業者の財産であり、仮想通貨交換業者に法的倒産手続が開始された場合には、利用者が仮想通貨交換業者に対して有する仮想通貨の返還請求権は一般債権として扱われるにすぎませんでした(倒産手続における債権の取扱いについては弊所ジャーナル『新型コロナウイルスに関する企業法務の実務(債権回収編)』参照)。これに対し、改正後の資金決済法においては、利用者が暗号資産交換業者に対して有する暗号資産の返還請求権は、当該暗号資産交換業者が分別管理する利用者の暗号資産及び履行保証暗号資産について優先弁済を受ける権利を有し、その結果、暗号資産交換業者に法的倒産手続が開始された場合でも、暗号資産の管理を委託した利用者は、分別管理する利用者の暗号資産及び履行保証暗号資産について他の債権者に優先して弁済を受けることができます。ただし、暗号資産交換業者が利用者の暗号資産及び履行保証暗号資産を第三取得者に移転した後は、利用者は当該優先弁済を受ける権利を行使することはできません(改正資金決済法63条の19の2第2項、民法333条)。
これにより、令和3年末を頂点として暗号資産価格は長期低迷するとともに、令和4年後半のいわゆるFTX事件が象徴する業界の冬の時代入りを受けて、金融庁は暗号資産交換業者の新規参入に極めて抑制的な姿勢を示しています。
また、従来は暗号資産交換業者が新たな暗号資産を扱う場合には、一般社団法人暗号資産交換業協会(JVCEA)の事前審査を受ける必要がありましたが、令和4年に入って審査の遅延が規制上の問題化しました。
改正資金決済法においては、暗号資産交換業の利用者に信用を供与して暗号資産の交換等を行う場合には、内閣府令で定めるところにより、当該暗号資産の交換等に係る契約の内容についての情報の提供その他の当該暗号資産の交換等に係る業務の利用者の保護を図り、及び当該業務の適正かつ確実な遂行を確保するために必要な措置を講じなければならないとされています(改正資金決済法63条の10第2項)。これを受けて内閣府令では、暗号資産信用取引に関する特則の規定(暗号資産交換業者に関する内閣府令25条)が設けられています。暗号資産信用取引は、内閣府令において、「暗号資産交換業の利用者に信用を供与して行う暗号資産の交換等」(暗号資産交換業者に関する内閣府令1条2項6号)と定義されていますが、「信用を供与」とは金銭の貸付けのみならず暗号資産の貸付けも含まれます(金融庁内閣府令等パブコメNo34)。なお、暗号資産信用取引を行うに際して、暗号資産交換業者が利用者に対する金銭の貸付けを行うときは、貸金業の登録を受ける必要があります(金融庁ガイドラインⅡ-2-2-2-1)。
一般に、暗号資産は、「交換所」や「取引所」と呼ばれる事業者(暗号資産交換業者)から入手・換金することができます。暗号資産交換業は、金融庁・財務局の登録を受けた事業者のみが行うことができます。
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