暗号資産交換業者 登録要件
資金決済法第63条の2によれば暗号資産交換業者は、「内閣総理大臣の登録を受けた者でなければ、行ってはならない。」とされています。すなわち、暗号資産交換業者として登録しなければ業務を行う事ができません。
なお、金融庁から、日本暗号資産取引業協会に対し、トラベルルール(暗号資産の移転に際し、その移転元・移転先に関する情報を取得し、移転先が利用する暗号資産交換業者に通知することを求める規制)の実施が要請されています(「暗号資産の移転に際しての移転元・移転先情報の通知等(トラベルルール)について(要請)」)。
暗号資産交換業者は、ユーザーからお金や暗号資産を預かるほか、金融サービスの提供を行い金融インフラの一翼を担うので、暗号資産交換業を適正かつ確実に遂行する体制の整備、資金決済法等の規定を遵守するために必要な体制の整備が求められます(資金決済法63条の5第1項4号)。
そこで、暗号資産交換業者は、ユーザーの暗号資産を自分の暗号資産と分別して管理することが義務付けられています(資金決済法63条の11第2項前段、暗号資産交換業者に関する内閣府令27条1項)。
その結果、暗号資産交換業者には、売買取引にかかる損益が発生し、決算時には暗号資産を期末の時価で計算するために、期末保有暗号資産に対して含み損益が発生します。
暗号資産交換業者は、その行う暗号資産交換業に関して広告をするときは、次の項目について表示しなければなりません(資金決済法第63条の9の2、暗号資産交換業者に関する内閣府令第18条)。
そして、不正流出防止等、ユーザー保護のため、暗号資産交換業者は、秘密鍵等、ユーザーの暗号資産を移転するために必要な情報を、常時インターネットに接続していない電子機器、メディア、紙等に記録する等して管理する必要があります(いわゆるコールド・ウォレット。資金決済法63条の11第2項後段、暗号資産交換業者に関する内閣府令27条3項。なお、インターネットに接続された状態で秘密鍵を保管するタイプのものはホット・ウォレットといわれ、通常、コールド・ウォレットに比してハッキング等のリスクが高いです。)。
暗号資産交換業者は、利用者の保護のため、暗号資産の性質や契約の内容について情報を提供し、また、利用者の保護・業務の適正かつ確実な遂行を確保するために必要な措置を取らなければいけません(資金決済法63条の10)。
一方取引所で暗号資産を交換する場合は、取引の相手が他の暗号資産交換業者等のこともあり、相手の債務不履行で決済が行われない可能性もあります。
暗号資産交換業者が、その財産的基礎が脆弱であって破産してしまい、預かったお金や暗号資産をユーザーに返せなかったり、他の債権者にお金の支払い・暗号資産の引渡しができなかったりしたら、多くの人たちに迷惑が掛かってしまいますよね。
なお、「取り扱う暗号資産の名称」または「暗号資産交換業の内容及び方法」のいずれかを変更する場合であっても、「暗号資産交換業の利用者の保護に欠け、又は暗号資産交換業の適正かつ確実な遂行に支障を及ぼすおそれが少ない場合として内閣府令で定める場合」(改正資金決済法63条の6第1項)は除外されています。これを受けて内閣府令においては、取り扱う暗号資産についてその取扱いをやめようとする場合、取り扱う暗号資産において用いられている技術または仕様の変更を理由として当該暗号資産の保有者に対して新たな暗号資産が付与される場合、暗号資産交換業の内容または方法のうち所定の事項以外の事項を変更しようとする場合(暗号資産交換業者に関する内閣府令11条)は事前の届出を要しないとされています。
そしてこの場合でも、ホット・ウォレットで管理するユーザーの暗号資産と同種同量の自分の暗号資産(履行保証暗号資産)を、他の自分の暗号資産と分別して、コールド・ウォレットで管理する必要があります(資金決済法63条の11の2、暗号資産交換業者に関する内閣府令29条)。
上述のように、暗号資産交換業者には、受託暗号資産の一部をホットウォレット等の「安全性の高い管理方法」以外の方法で管理することが認められています。ただし、それらの暗号資産が流出した際には、利用者への返還義務の履行ができなくなるおそれがあります。
利用者は、暗号資産交換業者に対して暗号資産の返還請求権を有しています。暗号資産交換業者が分別管理している預託暗号資産・履行保証暗号資産については、利用者は他の債権者に優先して弁済を受けることができます(資金決済法第63条の11の2)。
暗号資産交換業者は、利用者からの受託金銭を、自己の金銭と分別して管理し、信託会社等に信託しなければならないとされています(資金決済法第63条の11第1項)。
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